無題

思い残したこと
やっておきたいこと
連絡を取りたい人はいないの?

と訊いたら、

なんにもない。
もう十分。
みーちゃんと住むことが私の希望だった。
最後にみーちゃんと暮らせてよかった。
と言った。

「みーちゃんが良い人でよかった。
世の中には、親が死に目にあっても
会おうとしない子供がいる中で
みーちゃんはちゃんと
親を見捨てず大事にしてくれて
向き合ってくれる人で良かった。
大人の女性で立派に暮らして
賢くて安心した。」

いつもは意識が朦朧として
たどたどしくしゃべるのに
泣きじゃくる私を諭すように
明朗な発音で言った。

少しだけ、救われた。
私は思い残すことばかりだよ。
後悔しても、しきれない。
もっと、もっと、もっと。

「私は幸せ。ラッキーなのよ。
みーちゃんもラッキー。
若いうちに、独り身のうちに
親が居なくなってラッキーよ。
自分が老いてから、家族に気を遣いながら
老いた親の面倒見ないで済むんだもん。」

モノは考えようだな。
さすが、私の母だわ。