無題

最近、家族が欲しいと強く思うようになった。私にはそもそも家庭運というものが欠如しているので、温かい家庭を持つことは望んではいけないことだと思い込んでいた。大逸れてるかもしれないけど、願えば。心の奥底から願えば、叶うかもしれない。

愛する人に、身も心も尽くす。子供を産み育てる。笑いの絶えない家庭を作る。

無題

いつまでも泣いてしまうのはオカシイのだろうか。葬式の直後よりも今の方が哀しみが強い。側にいてくれたら。愚痴を聞いてくれたら。味方がいなくなった。私のことを知っている人が居なくなった。私の嬉しいことも悲しいことも自分のことのように感じて一緒になって喜んだり怒ったりする人が、この世から消えた。辛い。何をするのも虚しい。

無題

仕事がしんどかった。熱中症に近かった。仕事辞めたい。レモンサワーは二杯あおった。泣きじゃくりながら家路に着いた。ピンクの花を買って母にお供えした。会いたい、寂しい、と泣きわめいた。母の色んな顔が思い浮かぶ。もっと色んな話をしたかった。

無題

一昨日と昨日と
私が一泊二日で旅行していた間
宏ちゃんはまたうちに泊まった。
(なぜ泊まりに来るのだろう
(母に線香とお供えをあげるため?
(母と過ごした部屋で思い出に浸るため?
(生活費、少しは出してほしい。

旅行のお土産があることを伝えると
とても嬉しそうに、またうちに来た。

お昼ごはんを食べながら
土産話をして、30分そこそこで
私は席を離れた。

お骨をどうするか
この家をどうするか
母の持ち物をどうするか

ずっと悩んでいるのだけれど
相談しても
「思うようにすればいい」とだけ言う

母は墓に入りたくない、
ハワイの綺麗な海に撒いてほしい
と言っていたので
そのようにする、と伝えると
横浜や川崎にある共同墓地の話を
ウダウダとし始めて
胸糞が悪くなった。

引っ越すにしても
膨大な遺品整理を全部私に任せて
(好きなようにして、と言いながら
コレは高く売れる
アレは買ったばかり
ソレはまだ使える
と、ウダウダ言う
私は極力モノを増やしたくない
1人で充分暮らせるモノを既に持っている
処分しなければいけない
モノを手放さなくてはいけない苦しみを
人に押し付けておいて
勝手に口挟んでんじゃねぇよ

私は、結局のところ、
宏ちゃんを恨んでいるのだ。

お前が一緒に居ながら…
お前と一緒に居たせいで…

そんな事を言っても仕方ないから
言わない
本人が一番そう後悔しているだろうから
言わない

宏ちゃんは、決して、家族ではない
母の恋人だった人だ
今はもう、母はいない
家族はもういない

私は冷たい人間なのだろうか

無題

6月5日に母が転倒してから
宏ちゃんは所用が無い限り
うちに泊まっていた。

宏ちゃんの家は隣の県にあり
うちまで約2時間かかる。
交通費も片道1000円近くかかる。

母が入院している間も泊まった。
「泊まった」というのも
「帰ってきた」というのも
どちらも違和感を覚えるのだが。
一応「おかえりなさい」という。
(時々「お疲れさまです」ともいう。

火葬の後も寝泊まりしていた。
母が寝ていたベッドに寝そべって。

宏ちゃんはしばらく仕事をしていない。
仕事をしていないおかげで、
母に付きっきりで
看病してもらえたのでありがたい。

が、しかし。
母が居ない今、
宏ちゃんがうちに来て、
母が愛用していたマッサージチェアに座り
私が買った扇風機に当たりながら
母たっての希望で買った大型4Kテレビを
私が日中汗水垂らして働いている間
のほほん〜と観ている

と思うと、腑に落ちない。

宏ちゃんはヘビースモーカーだ。
家の中では決して吸わないように、
と母がうるさく躾したせいか
部屋では吸わない。

ビーチサンダルを履いて
家の周りを散歩しながら
吸っているようだ。

先日、朝起きて台所に行くと
ゴミ箱からタバコの臭いがした。
まさか、と開けてみると
可燃ゴミと一緒に吸い殻が捨ててあった。

その日は朝の目覚めがすこぶる悪くて
怒りがこみ上げて来た。
家でタバコのゴミは
一切持ち込まないでくださいっ
と吐き捨てるように言い、
朝食も取らないまま出掛けた。

宏ちゃんの顔をまともに見れなかったが
戸惑いと申し訳無さと悲しさが
混じった声色で
「あ、ごめんね」って言った。

それっきり、宏ちゃんは
うちに泊まっていない。
私が仕事に行っている間、
お線香をあげに来ているようだ。
リンゴやキウイやモモやサクランボや
栗饅頭やカステラ、大福を
お供えしてくれている。

帰宅すると
台所の豆電球が点いてて
それが嬉しいけど、切ない。
「お帰りなさい。お疲れさまです。
ジュースを作ったので
飲んでください。」と
置き手紙をしてくれる。

リンゴとニンジンとレモンで作ったジュース
甘さと瑞々しさが全細胞に沁みる。

このままでは駄目だ。
母と暮らすために借りたこの家には
結局2ヶ月も居なかった母の
沢山の希望が詰まりすぎている。

上野公園を散歩したい
動物園のパスポートを買って毎日通いたい
美術館にも行きたい
友達を沢山作りたい

願いを叶えてあげられなかった無力感に
宏ちゃんも私も心が潰れそうになる。