無題

朝9時に火葬場に行った

宏ちゃんが車を出してくれたけど
私は寝起きからとても不機嫌で
多分、雨と低気圧と
寝不足のせいで
あまり会話をする気になれなかった

こんな状態の時、この歳になって
甘えてるなぁと自責するのだが
反面、私はある意味「可哀想」だし
という開き直れるようになった

端的にいうと
図々しくなったのだと思う
(気を遣って良い子でいることを
放棄して自己愛が高まるなら
それでいいのだ!

棺桶の中で眠る母は
死後1週間経ってしまったけど
思ったほど変化はなかった

白や紫の洋花を
母の枕元にひとつひとつ並べる
母のおでこや前髪に触れた
冷蔵庫から出したばかりのように
とてもとても冷たい

葬祭場の方々の言動が
ステマチックで救われる
儀式っていいものだなぁ

焼香のあげ方が分からなかった
右隣の宏ちゃんを盗み見ながら
真似した

宏ちゃんは泣いていた
泣くんだ、と、少し驚いた
私はあまり泣けなかった
本当は声を上げて
泣きたいけど
泣き出すと止まらないので我慢した
(その後、帰宅して
1人になった時に骨壷を抱いて
号泣した

焼き終わるまでの1時間
斎場の喫茶室で
母の思い出話をしながら待った

宏ちゃんが母のこと好きだったんだな
って改めて分かって
もう、それだけでいいや
私から言いたくても言わないでいる事を
宏ちゃんは痛いほど分かっているはずだ

家に帰ってきた
14日の朝、入院に付き添ったことが
随分前のことのように感じる
介護タクシーの人に車椅子に乗せられて
無表情の母
悟りきったような顔

これで良かったのだ
と、言い聞かす
ああすればよかった、こうすれば
と考えてしまうと
もう、一歩も動けなくなる

やれる範囲のベストは尽くした
やれなかったことは
自分自身や
他の大切な誰かに果たしていこう

こんなことを言ったら嫌われるかもしれない
なんて心配をしなくてもいい人を
失った

こんなことを言ったら嫌われるって思わずに
なんでも話してくれる人を
失った

かけがえのない人が
居なくなった
さみしい、すごくさみしい

気丈に振る舞って
仕事も休まず働いているけれども
(仕事に救われている
仕事以外の私は
生気が無いような顔をしている

最近よく思う
子供がほしい
この人の子供を産んで
一緒に育てたいと
思える人に会いたい

父の日

2017年6月18日2時40分、母が死んだ。父の日に、母が死んだ。強くて逞しくて美しくて面白くて料理上手で世話好きで健かで、よく笑い、よく泣き、愛し愛された母が死んだ。

 

死んだけど、いつでも話し掛ければ近くにいる。私は特定の宗教を持っていないけれど、母を心の拠り所に生きてみようと思う。人生を味わい尽くしたい。したいことをする。行きたいところに行く。逢いたい人に逢う。食べたいものを食べる。授かったものを使い切りたい。大丈夫。私は大丈夫。大丈夫。

無題

明日、母が入院する。
今日の午前中に、入院を決めた。

一昨日から食事の量が減ったこと。
トイレに1人では行けなくなったこと。
夢と現実の違いが分からないこと。
突然脈絡のないことを言うこと。

これらの症状を医者に伝えると
末期特有のもので
あと数週間、6月越せるかも危うい
とのこと。
在宅でのケアも可能ではあるが
病院での最期を勧められた。

母は
トイレが1人で行けなくなったら
入院させてくれと言っていた。
食事が摂れなくなったら
点滴もせず、延命もしないで、と。

私は、母を尊重する。
いよいよ、入院か…と
さみしくもあり、少し安堵もあり。

せん妄なのか?脳への転移なのか
意味不明なことを言う。
「料理を出さなきゃ」
「お客さんが来る」とか
真夜中に急に歌い出すとか
「私の子供はどこ?」と娘の私に
心配そうに尋ね、
みーちゃんがママの子供だよ、と答えたら
「じゃあ私の孫は?どこにいるの?」
と真顔で訊いてきて
居ないよ、作る相手が居ないww(泣
と答えたら
心底がっかりした顔をされた。

子供なんて、今の時代、
必ず産まなきゃいけないって訳じゃないし
みーちゃんの好きなように生きれば
孫なんて期待してないから

なんて言ってたくせに
『親に孫の顔を見せてあげたかった』
っていう、ありふれた台詞を
私が吐くなんて思いも寄らなかった。

今日は一日中、母のそばで過ごしている。
足先もお腹もぱんぱんに膨れている。
少しでも浮腫が軽くなるように
冷えないようにマッサージする。

会話の途中で意識を失うように眠り
眠りから覚めると、
寝てしまっていたことに恐がる。
眠りと死は似ているのだろうなぁ。

母と抱き合った。
小学校の頃は、母のベッドで
よく一緒に眠ったものだ。
30年ぶりに、母と抱き合って寝た。

泣くまいと頑張っても、
涙が出てしまう。
母は泣かない。
「もう、覚悟は出来てるから。
誤魔化さないから。
なんとか頑張れば生き延びられるとか、
奇跡が起きて元気になるとか、
もう、諦めてるから。」

さめざめと泣く私に
「なんでも言ってみなさい」
となだめてくれた。

さみしい。
これまで言わないようにしてたけど
さみしい。って言ったら

「よく分からないけど…
多分、ママはずっと
みーちゃんのそばにおるよ。
遠く離れたところから
煙たがられないように。
煙たがられると、ママはかなしいから
離れたところからずっと見てる。
だから、こんなことを言ったら
ひどいと思われるかもしれないけど
ママは全然さみしくない」

私は、生まれてきてよかった。
ママの子に生まれてきてよかった。

「ごめんね。
全然いい親じゃなくて
不真面目だったかもしれないけれど
子育てが楽しかった。
ママの人生で一番楽しかった」
と、ひっさしぶりに
とびっきりの笑顔で言った。

入院前に、意識がしっかりしているうちに
たくさん話せてよかった。

覚悟しなくては。
笑顔で見送りたい。

無題

人前で泣くことは
とてもかっこ悪いことだと思っているが
かっこ悪さをさらけ出してまで泣く程、
今、とても辛い状況なのだ、と
自覚すること、及び、
他者に知っておいてもらうことは
大事だと思った。